真昼間、延々と続く大名行列のような人々の群れ。
「下に、下に」と誰の号令か多士済済に下を向きながら、
横を向きながら、斜めを向きながら、
どこで買ったのかわからない鞄をぶら下げてただひたすら歩いていた。
発する端もない、痰も吐かない道端の少年は、いがらっぽい喉をくすくす鳴らしながら
不安げに辺りを見回して、涙を流して、そして消えた。

これが世界の正体で、僕には何も、言うことがありません。

誰からともなく発された情念が彼の心を打つ。
お前は何を思ってるんだ?誰がお前を認めるんだ?
雪ん中ガードレール、必死で右手を添えながら歩いていたころから
聞こえた声は埋もれた、彼の心に埋もれた。
五センチ十センチ身長が高くなるにつれ、呼びかけられた彼は
それに答えようともしない。無礼だ、とても無礼だ。

何十年も昔から横たわっている真実は一つだけで、
その一点を巡ってまたぞろ人々が争って血みどろになって、
手を汚して心を汚して生臭いことをする。
言い忘れたが道端の少年が喉を鳴らしたとき、並んでいた人々は一斉に少年のほうを向いて、
できうる限りの嘲笑をしたんだよ。

そう、これが世界の正体なんだよ!

バラバラになった少年の心を見たとき、俺は昔の、底の浅い幼稚園のプールを思い出していた。

思い出す。
心ならずも。
思い出す。

数年たったら効いてくる、間隙を縫って二度!三度!
頭に腹に響いてくる、間隙を縫って二度!三度!
虚空を彷徨う言葉たちが、居場所を見つけて二度!三度!
枕を並べて死んじまう、心の言葉が二度!三度!


四六時中灰色の雲に包まれた俺の心象風景は
まるでミッドウェーの騙されたあとのあの気持ちで、
夜部屋にいるときもいつ身体を突き破ってくるかわからない
野鼠の声に心を震わせていた。
脳裏には常にオレンジ色の光が数秒おきに点滅して、
空を切った右手の軌道は、微動だにしない魚の血合いをぐしゃりと掴んで
横のブランデーの瓶を貧相なお前の顔に叩きつけるんだよ。
そしてまた朝がきて昼がきて夜がきてそれを何百万回も繰り返して、
皆始まったり終わったり喜んだり悲しんだり、わめいたり叫んだり転んだり、
出会ったり別れたり好きになったり嫌いになったり、
くだらねえことにかおをぐしゃぐしゃにして、喜怒哀楽をあらわにして頑張っちゃったりするんだ。


そうだ、きっとそうだ。


剥き出しになった塑像は、南を睨んでパッと消える。
一握の砂、ゆっくりと、宙に舞わせてパッと消える。
パッと消える。
パッと消える。

破綻した少年は、次第にステンレスの心を身に付けていった!
数年たったら効いてくる、間隙を縫って二度!三度!
頭に腹に響いてくる、間隙を縫って二度!三度!
虚空を彷徨う言葉たちが、居場所を見つけて二度!三度!
枕を並べて死んじまう、心の言葉が二度!三度!